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応援と声援、罵倒と脅しが混ざりあって闘技場の温度を上げて行く。
しかし、闘技場の中央で向かい合う闘士2名は動かない。ただ睨み合っている。
先に痺れを切らしたのはアレックスのほうだった。
「しかたねぇ、俺から動こうか」
自慢の金棒を片手で振りかぶると頭上でグルリと振り回した。
そして、振り下ろす。
真っ直ぐ縦に振り下ろされた金棒の先が、ロンギヌスの鼻先をスレスレで過ぎると足元を叩いた。
硬くて鈍い音が響く。
金棒を引き戻すアレックスが言う。
「詰まんねーな、おまえ」
するとフードで顔を隠したままのロンギヌスが語る。
「処刑するのに、詰まる詰まらないは関係ありません……」
「なに~。この試合を処刑だと言うのか、おまえは?」
「それは、あなたが罪人で罪を償わなくてはならないのなら、そうなります──」
「くだらねー気取りかたをしてんなよ!!」
言いながら横振りに金棒を構えたアレックスがフルスイングする。
今度は当てる気だ。威嚇ではない。
その横振りのスイングをロンギヌスは槍を立てて受け止めた。
するとロンギヌスの両足が、30センチほど踏ん張った跡を残して横に滑る。
だが、ロンギヌスは体勢を崩していない。力負けしていないのだ。
「なんだ、おまえ。なかなかのパワーが有るんじゃないか、いいね~」
アレックスが言っていると、ロンギヌスが長槍を横に振りかぶった。
「おお?」
今度はロンギヌスが長槍で横振りのスイングを繰り出す。
その振りをアレックスは金棒を立てて防いだ。
同じように踏ん張った足が30センチほど痕を残して横にズレる。
最初にアレックスが述べたとおり、ロンギヌスはなかなかのパワーであった。
すると今度はロンギヌスから口を開いた。
「今度は技を競いましょう」
刀身をアレックスに向けたロンギヌスが腰の高さで槍を構えた。
腰を落としていつでも突ける姿勢である。
それを前にアレックスは仁王立ちを平然と続けていた。
「いいぜ。好きに突いてきな」
アレックスが余裕を語る。
「ならば、参る!」
右足で強く踏み込んだロンギヌスは両手でしっかりと持った長槍で、アレックスの腹部を突いてくる。
その槍の突きをジャンプで回避したアレックスが、槍の切っ先に着地した。
そのまま槍の上でアレックスは、金棒を背負って立っている。
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