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「親方」
やっと家に帰りつく。
正確には、家ではないのだが。
「新聞、取ってきたよ」
「……おう……」
奥のほうで、のそりと影が動いた。
声には覇気がない。リオは後ろ手で扉を閉め、大きくため息をついた。
「ちょっと、親方。まだ寝てるの?」
「寝ながら起きてたさ」
「それは起きてるとは言いません」
ガタイのいい男がのろのろと起き上がった。
「おまえは俺のおふくろか」
「親方がしっかりしてないからでしょ」
「へいへい」
「もう、ちゃんと起きて。ご飯親方の分作ってあげないよ」
親方と呼ばれた人物はにやりと笑った。人の悪そうな笑みに見えるのは、他意があるわけではなく、もともとの人相が悪いからである。
「そいつは困る」
「でしょ。ちゃんと起きて毛布も畳んでね」
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