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「下町が物騒なのは今に始まったことじゃないでしょ」 「そうだけどよ。……今度はここの近くに出たらしいな」  ほら、と親方が新聞のある箇所を指さしながら差し出してくる。  【通り魔、再び】——やたらと大きな見出しが紙面を踊っている。新聞はここのところ、この事件ばかり報じているのをリオも知っていた。  最近下町には、通り魔が繰り返し出没しているのだ。 「自警団は、何してるんだろうね」  ふっとため息をつく。 「自警団は調査を続けてるけどいまだ手がかりはつかめず、だとよ。本当に動いてるかは疑問だけどな」 「親方」  リオがたしなめるように呼ぶ。親方は大仰に肩をすくめてみせた。 「自警団の奴らは基本的に上の奴らだからな、興味がねぇんだろ」
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