お人好し

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それから数年、僕は高校生になる。  それは数学の授業を受けている時のことだ。後ろの席に座っている女の子から手紙を渡された。この学校は共学で男女交互に席が並んでいる。今の時代、手紙なんて珍しいと僕はこっそりそれを受け取った。四角に無造作に折ってあった白い紙を広げると汚い字で殴り書きがあった。 『放課後に4階のトイレに来てよ』 いったい誰からだろう。これは僕あての手紙なんだろうか。訝しみながら手紙を丸めて机の隅に置くと、また後ろの女の子が背中をトントンと叩いた。僕は後ろを振り返る。女の子は無言でさっきと同じような手紙を差し出した。僕はまたそれを広げる。 『瑛太君、待ってるよ』  どうやら、僕を呼びだす手紙らしい。放課後か。部活間に合うかな。いやいや部活なんかより4階のトイレは出るって噂の場所だ。この学校は1年生が1階、2年生が2階というように配置がされてあって、4階は視聴覚室だとか、教師が使う会議室だとか、あまり使うことのない教室が並んでいる。4階に行く子は滅多にいない。そこのトイレは何年も前に女の子が怨霊に憑りつかれて学校からいなくなったという話である。僕は悪寒がして、また手紙を丸めた。
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