お人好し

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 トントン、またもや後ろの女の子が背中を叩く。僕は同じように手紙を受け取ると読まずにそれを机の中に入れた。そうして数年前の秋の始めを思い出す。 「あの子がいなくなったらしい」  この話はお兄ちゃんが友達としていた記憶がある。僕が中学生の時だったかな。 「憑りつかれたんだってよ。それで精神に異常をきたして何時の間にかいなくなったんだってさ」  僕とお兄ちゃんは同じ高校だ。歳が3つ離れている。詳しい話は聞かなかったが、確か4階のトイレには男子に振られて首を吊った女の子が出るという話だった。その怨霊にあうと神隠しにあったようにいなくなると聞いた覚えがある。僕はそれを知っていたので4階のトイレには行った事がない。僕でなくとも行く子は少ないんじゃないか。3年生がトイレ掃除で仕方なくそこを使うくらいである。  授業が終わり、放課後になった。手紙を無視して部活に行くという方法もあるが、ここで怖気づくのも癪である。僕は4階に行く為に階段を上がった。ちょうど踊り場のところにクラスの女子たちがいてお喋りをしていた。僕が背中を丸めて通り過ぎようとしたら、リーダー格の女子が話しかけてきた。
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