お人好し

5/7

42人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
あれ、ドアが開かない。  誰かがふざけてドアを押さえているのだろうか。僕は大声を出した。 「おーい、ドア開けろよ」  僕はノブを上下に強く揺さぶった。だがドアはビクともしない。どうしよう。閉じ込められた。くそう。よりによってこんなところに。やっぱり来るんじゃなかった。僕は下唇を噛み締めた。 ツン、ツン。 ツン、ツン。  誰かが背中を突く気配がする。気のせいか?確か誰もいなかったはず。後ろを向いて確かめたいが怖くてそれが出来ない。 ツン、ツン。 ツン、ツン。  ああ、止めろ、止めてくれ。僕はまた大声を出した。 「だ、誰なんだよ。僕をここから出してくれ」 「ふふふ、ふふ。わたしは紗理奈。ここで死んだの」 ちくしょう、首を吊って死んだ子の怨霊か。それとも誰かの悪い悪戯?だが待てよ、この名前、聞き覚えがある。 「手紙、読んでくれたんでしょ。あれ、わたしが憑りついて男子に書かせたの。瑛太君のこと誘おうって思ってたんだ。わたしの事覚えてる?」 「えっ、誰だっけ」 「ねえ、ねえ。ロープ持ってきた?」 「な、なんだよ、ロープって」 「3枚目の手紙に書いてなかった?ロープを持ってくるようにって」 ああ、僕はそれを読んでいない。机の中に放り込んだんだ。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

42人が本棚に入れています
本棚に追加