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「首吊りってね、苦しいようだけど、そんなことないの。だから瑛太君を誘ってみたんだよ」
首筋を誰かがなぞってくる感触がある。逃げ出したいがドアは頑として開かない。どうしよう。そうだ。もしかしたら掃除に3年生が来るかもしれない。僕は目をギュッとして必死に耐えた。だが時間はのんびり経過するだけである。
「ねえ、ねえ、こっち向きなよ」
紗理奈と名乗った女の子の声が真後ろから聞こえる。僕は恐々と振り返った。
目を剥いて舌を出した首吊り死体がぶら下がっていた。
「う、うわー」
僕は腰が抜けたようにその場にしゃがみ込む。
「おいで、一緒に行きましょう」
死体がこっちをハッと見たかと思うと、舌を引っ込めて大きく口を歪ませて喋る。笑っているようにも見えた。
「ど、何処へ」
「ふふふ、ふふ」
もしかして僕も何処か知らない場所に連れていかれて神隠しにあうのか。お兄ちゃんが言ってた「あの子がいなくなった」の話が脳裏に過った。嫌だ、まだ死にたくない。僕は頭を左右に振った。
「わたしと行ってくれないの?」
「ああ、僕はまだやりたいことがあるんだ」
死体から目を逸らして必死に声を絞り出す。
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