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どこまでフィクションな恋物語か
#一次創作BL版深夜の真剣60分一本勝負 のお題に挑戦しました。
・文化祭
のお題を使用しました。無理やり感ハンパないです💦
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「今日は抱きしめるだけ。次来た時、まだ僕のことが好きだったらキスしてあげる」
もちろん、好きなままだった。抱きしめられた時のあの高揚感と幸福感は、初めてに等しい強さだった。
「好きでいてくれてありがとう。じゃあ、約束通り……キスしてあげる」
人生で初めてのキスを、同性から受ける。
いや、性別は関係なかった。相手がこの人だったから、唇に最初触れられた時も、二度目三度目と繰り返されても、嫌な気持ちにならないどころか、もっと欲しくなった。
この人への想いは嘘じゃない。本物だとようやく確信できた。
「おれ、あなたのこと本当に好きです。何があっても絶対ぶれません。だからもう、確認はいりません。……付き合ってください」
自分を気遣って、段階を踏んでくれていたのはわかっていた。
今こそまっすぐに応えたい。偽りない本心を届けたい。
「……また、会いに来るよ」
返事はもらえなかった。それどころか、約束もなかった。
確定された未来が目の前に降りてくるはずだったのに、一瞬で手が届かなくなってしまったようだった。
嫌な予感がした。「会いに来る」と言われはしたが、それも果たされない気がしてならなかった。
――今度は、自分から会いに行かなきゃダメなんだ。怖いけれど、怖じ気づいていたらダメなんだ。
「まさか、君から来てくれるなんて思わなかったな」
唯一の手がかりだったバイト先に何日も張り込んで、ようやく会えた想い人。本当に来るとは思っていなかったようで、純粋な驚きだけが存在していた。
その場で言葉を連ねようとした自分の手を取ると、建物の裏に向かう。改めて対峙するも、なかなか彼は目線を合わせてくれない。
「……おれ、本気です。抱きしめてもらった時も、キスしてもらった時も、すごく嬉しかった。気持ち悪いとか全然なかった。……あなたは、違うんですか?」
最後の問いかけはしたくなかった。その通りだったら立ち直れない。どうして期待させたんだと、恨みさえしてしまいそうだ。
「本当に好きになってくれるなんて、思ってなかったんだ」
ようやく発された言葉は、意味のわからない内容だった。
「改めて告白された時に、僕も同じくらい好きなのかなって思ってしまったんだ。……僕からあんなことを提案したのに、最低だよね」
最初に告白した後、段階を踏もうと言ったのは彼からだった。
『僕も好きだけど、本当に同じ気持ちなのかわからないから。確かめる意味でも、少しずつ恋人らしいことをしていこう?』
結果は確かめるまでもなかった。だからこそ二人のこれからに心躍らせていたのに、現実は非情になりかけている。
「それで、どうなんですか。おれのこと、本当に……好きなんですか? キスとかしたいって思うくらい、好きでいてくれてるんですか?」
声が震える。そうだと肯定してくれ。お願いだから、おれを否定しないで。
掴まれたままだった腕をぐいと引っ張られた。否応なしに目の前の胸元に飛び込む形になる。体勢を整える間もなく、頬を包まれた。
呼吸のまともにできないキスをされている。口内を動き回る柔らかいものは……彼の、舌? それに、たまに聞こえる変な声はもしかして、自分のもの?
無理やりされているのに、呼吸もまともにできなくて苦しいのに、背筋がぞくぞくしてたまらない。気持ちいい。
「……こういうこと、したくてたまらないって思ってたよ。だから、本当は今日会いに行こうって思ってた」
こちらを見つめる瞳が熱い。気を抜いたらあっという間に染められてしまいそうなほど、鋭い光で照らしている。
「もう絶対離してあげられないよ。それでもいいの?」
返事の代わりに、初めて自分からキスをした。
「……っていう台本はどうよ? さすがに文化祭の舞台向きじゃないかなぁ」
「当たり前だろ! しかもこのネタ元ってお前とバイト先の先輩とのやつじゃねえか!」
「もちろんある程度加筆修正してるよ? 例えばべろちゅーなんて実際されてないしね。キスはされたけど」
「……それ以前に平然とネタにできるお前がこええよ……」
「でも恋愛ものとしてはなかなかいいんじゃないかなーと思うんだけどなー。書き直すのも面倒だし、いっそのことおれを女子にしちゃうか!」
「先輩見に来たらどう思うのかね。知らんけど」
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