わがまま猫な彼と僕

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わがまま猫な彼と僕

#創作BLワンライ・ワンドロ! のお題に挑戦しました。 お題は「花より団子」です。 タイトルは適当だし、花より団子……? な出来です← ---------  二年前だったと思う。SNSでもかなり話題になったドラマだった。  僕はもちろん、バイト先の先輩後輩も友達も大体見ていたし、感想や考察を話し合うのが当たり前になっていた。  だが、今隣にいる僕の恋人は当時全く興味を示さなかった。  と思ったら、今さら「気になるから今度一緒に観たい。レンタルしてきて」とおねだりまでしてきた。本当に読めないヤツだと思う。  なのに……この状況はなんだ? 「あのさ……観てる? ドラマ」  第五話まで来たところで、僕はたまらず声をかけた。これからどんどん面白くなるというのに、この男の行動が信じられない。 「んー? 観てるよ、もちろん」 「って言いながら画面見てないじゃん!」 「へー、わかるの?」 「さっきからちょっかいかけられてるからね」  僕は、テレビは床に座って好きな体勢で観る派だ。彼はソファ派だから何となく縦に連なるような形になったのだけれど、そのせいで頭を撫でられたり耳たぶを触られたりと地味なスキンシップを受け続けている。  彼がイタズラ好きというのは今に始まったことではないけど、言い出しっぺがこの態度だとさすがに文句も言いたくなる。 「そっちが観たい観たいってダダこねるから借りてきたんだよ? なのになんなの?」 「なんなのって、そりゃ決まってるだろ? お前が可愛すぎるから」  思わず背後を振り向いた拍子に唇をさっと盗まれる。まるで手練れの怪盗だ。  でも正直、ときめきじみたものは全然ない。 「誤魔化しのつもり? 普段そんなこと言わないくせに」 「心外だな。口に出してないだけでいつもそう思ってるぞ?」  怪しい……。天の邪鬼と知りすぎてる僕からすればつい裏を読んでしまう。極端な話、スキンシップだけが頼りの綱だ。  というか早くドラマに戻りたいんだけどな……。展開を知ってても、本当に面白いと関係なく見れてしまうものらしい。 「俺は照れ屋だからそういうのは簡単に口にしないの。だからそう疑うなって」  隣に移動してきた恋人は頬を人差し指で突いてきた。完全に馬鹿にしている。 「というか、今んとこそんなに刺さってないんだよなードラマ。表情コロコロ変わるお前見てる方がよっぽど楽しいわ」  何なんだ全く。本当は、ドラマ見終わったらいろんな話だってしたかったのに。楽しみにしていたレンタル中の僕が急激に色褪せてきて、悔しさと苛立ちのあまりリモコンの停止ボタンを押しかけて……止まる。 「……僕、見てたの? ちょっかい出してるだけじゃなくて?」 「あれ、気づかなかった?」  頭をなでなでしてくるにやにや顔を呆然と見つめる。 「オチまで知ってんのに笑ったり泣きそうになったりしてさぁ。全然飽きないのなんのって。俺的にはそれが収穫だったなー」  逃げたい。あるいは布団にくるまりたい。無防備な状態を観察されてたなんて恥ずかしい以外ない!  思わず両手で顔を覆うも、遠慮なしに外された。そのまま押し倒されて、床に固定されてしまう。 「本当に天然だよな、お前」 「天然って、意味わかんない……」  それ以上の反論は、互いの口の中に消えた。  ドラマは、いつの間にか第六話に進んでいた。クライマックスに向けてますます盛り上がる大事な回だ。  けれど、もう頭に入る余裕はなかった。
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