不幸の手紙

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「なによ、これ」  今どき手紙を出す人がいるなんて。  しかも書いてある内容が、イミわかんない。キモチわるい。  相手にする気にもなれなくて、あたしはそれをポイと机の上に放り投げた。  そのまますぐに捨てなかったのは、友達に見せようと思ったから。  笑えるいいネタだと思ったからだ。  キモいの来たーって見せて、ウケねらおっと。  普通ならSNSにあげるんだろうけど、あたしは自分用のスマホを持っていないのだ。おかあさんがケチだから、まだダメだってさ。  SNSやってる子に見せて、写真あげてもらおうかなー。バズったら盛り上がれそうだし。  そうなったら、ネタ提供者ってことで、ジュース奢らせてやろう。  ウシシ。  翌日、学校に着いてから、あの手紙を持ってくることを忘れたことに気がついた。さきにカバンに入れときゃよかったなぁ。  ……うーん、まあいいか、明日でも。  その一日、いつもと変わりない日常を過ごして、用事があるという友達と別れて教室を出た。もうすぐ文化祭があるんだけど、その打ち合わせがあるらしい。あたしは部活をやってないし、出し物にもかかわっていないから、無罪放免ってわけ。  漫画なんかだと、クラスで喫茶店とかお化け屋敷とかやってるけどさ、あんなの本当にあるのかな? うちの学校はそういうのない。有志がイベントを開催するぐらいだ。  階段を降りている途中で、大きな木材を抱えた男子生徒とすれちがった。あの人も運営者の一人かもしれない。 「――――っ!」  ほんの小さな痛み。  彼の抱えていた角材のささくれに、左の手が触れたらしい。わずかに切れた痕が、手の甲を赤く走っていた。  あなたは明日、左手を負傷するでしょう。  ふと手紙の一文が頭をよぎった。  まさか、そんなの偶然だ。  だいたいこんなの、負傷のうちに入らないじゃん。  謝罪する彼に手を振って返し、あたしは帰路についた。  関係なんて、あるわけがない。  家に帰ってから、あんな手紙捨ててしまえばいいんだ。  あんなのがあるから、余計なことを考えてしまうんだから。  そうだ、そうしよう。
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