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「ところで、部活動中のナンパも認めてないけど」
体を起こすと、加賀美が不満そうな顔でふんぞり返る。
「ナンパではない! 美護活だ!」
「何だそれ」
「美女を地球外生命体から護衛するための活動、略して美護活!」
その活動が我が新聞部に一体なんのメリットをもたらすのだ。
「もういいから、部長は記事を書けよ」
まったく。
今日は私たち三年が刊行する、最後の校内新聞の制作日だというのに。
これじゃあ先が思いやられる。
かつては視聴覚室という広大なスペースを与えられていた我が新聞部。
しかし部員減少に伴い今ではここ、図書準備室が活動拠点。
暗い。カビ臭い。加賀美がウザい。
この3Kを除いたら、新聞のネタになる資料は揃いやすいし、静かでパソコンも使えて、まぁ文句はない。
横目で窺い見た加賀美は、ご自慢の高い鼻を犬のようにヒクつかせている。
「んん? 俺たちの可愛い後輩たちは、一体どこにいるのかなぁー?」
加賀美は長机に鞄を放り投げ、パイプ椅子に腰を下ろすと、これまたご自慢の長い足を組んで悩ましげに眉根を寄せる。
「二年は修学旅行でオーストラリア。一年の秀才トリオは数学オリンピックとやらの予選で不在でございます、部長」
「一体どうなってんだ新聞部は! 部長と副部長が部活動の最終日だと言うのに、なんて薄情者ばかりなんだ!」
加賀美の性欲の方が、どうなってんだと物申したい。三日前にテニス部の香織ちゃんとデートしたんじゃねーのかよ。
「あんたは部活動最終日に、図書部の美人部長をナンパしてただけの下衆だけどね」
「美護活と言え」
だったら地球外生命体と闘ってこいよ、加賀美ぶちょーさん。
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