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「仁科さん、今度私たちの部活撮ってよ」
確か新聞部に入部して一年。高校二年に進級した春頃。私は新聞の上部を飾る写真コーナーの担当を任されることになった。
新聞制作には三年から順に紙面の四つの見出しを分担して担当している。当時先輩は二人。つまり二年の私と加賀美は残りの枠を埋めるために、半ば強制的に担当の一員にカウントされた。
先輩二人が学校行事と地域活動を担当。残された見出しは写真コーナーと、学校内外の有名人を取材する特集。
「ごめん、私、人は撮らないんだ」
「えっ、でも新聞部でしょ!? 人を撮らなくて何撮るの?」
趣味でカメラを扱い慣れてることもあってか、写真コーナーの担当を任されたのはいいけど、新聞部にとって致命的な欠点がひとつ。
被写体は風景のみ。そう決めている。
理由は第一に人に興味が無い。
それにカメラを向けると、途端に嘘っぽい笑顔を作るのも嫌でたまらなかった。
いくら楽しい時間を写真で切り取ったとしても。人が介在すると、途端に感情が邪魔をする。
たとえ最高の一瞬だと思ってシャッターを切っても、撮られた人が不快な感情を抱けば、その写真はただのゴミ屑同然なのだ。
だから、
「空を撮るつもり」
私は人を絶対に撮らない。
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