厄神蒐集家 (1)〜越前呪い旅

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お陰様というのも不謹慎だが、 私が主任に就任したのはこの夏だ。 「しかしまあ藤原さん、いよいよあんたの時代だね。」 私は大慌てで否定する。 「何をおっしゃいますやら、主任ごときがなんの権力もありませんよ。」 この男から、決して妬みを買ってはいけない。 冷静に、努めて冷静に事を済ませなければ… 「藤原さん、ご栄転なさったんですね」 吉瀬美智子に似たスナックのママは、艶然と微笑みグラスの水滴をぬぐう。 まずい…この流れは非常にまずい… ママはこの男、牛頭のお気に入りである。 牛頭は両目を細めて嬉しそうに笑った。 「栄転かい、けなるいのぅ。」 かちり、と何かのスイッチが切り替わる音が頭のなかに響いた。 午前2時…丑三つ時に、私は呪われてしまった。
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