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 いつもこう。あたしの邪魔者は突然に現れる。幸運を目の前にチラつかせ、突然に消し去ってゆく。でも、幸運は自分で掴み取るものなのよ。ほら、幸運はいつだってすぐそこにある。それを掴み取る決意をすればいいだけ。  長い片側四車線道路の彼方に、トレーラーを追い抜いた流しているタクシーが現れた。歩道側に停められている車列からでは止められないだろう。  女は駐車中の車をすり抜け、タクシーに気付かれるように数歩進み出た。その時にふと、プリントアウトしたチケットの確認をしていなかったように思い、バッグを開き中身を軽く覗き込んだ。折りたたんだコピー用紙は確認できた。まだタクシーは来ない。余裕は十分にある。 「でも、これは?」  女はバッグの中に白い封筒をみつけた。それは夫の為に書いた、別れの手紙だった。女は歩みながら自宅マンションへと振り返った。これから帰っていたらフライトの時間に間に合わなくなるかもしれない。何より決心が鈍るのが嫌だった。仕方がない、切手を買って空港で投函しよう。そう思い、住み慣れたマンションへも別れを告げた。 「さよなら、思い出たち」
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