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Ⅵ
当初、近親者のみの葬儀にしたいと夫は思っていた。しかし事故の報道や交際範囲の広かった彼女の知人たちの連絡網によって、葬儀には予想以上に多くの弔問者が訪れていた。
霊柩車のクラクションが辺りに鳴り響いた。
若くして不慮の死を遂げた彼女を惜しむ声と、すすり泣きに見送られて夫婦は火葬場へ向け最期の旅へ出発した。気忙しく彼に話しかけ導いてくれていた彼女は今、棺の中で静かに眠っている。
彼女がよく見せるイライラした表情に、いつもオドオドした態度しかできなかったことを彼はもう後悔していなかった。何事にも積極的で気の多い彼女の行動力に、いつも脅かされ嫌々ながら付き合わされた心労も、彼は嫌ってはいなかった。むしろ彼女に一歩近づけている嬉しささえも感じていた。
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