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「きゃあっ!酷いですっ!」
…うわ。
私は、驚愕と呆れで目を見開き口を半開きにした。多くの生徒が居る、ここリカバリ王国の魔法学園の入学式会場に続く通路で王太子としてあるまじき表情になってしまっているが、これは仕方ないだろう
左隣を見れば私の乳兄弟で側近兼護衛のジョセフも、斜め後ろに控えていた騎士団長子息のライオネルも同じ表情をしている
…ハッ?!
そうだ、固まっている場合では無い!クリスティーナを守らないと!!
私はエスコートしていた大切な婚約者、公爵令嬢でもあるクリスティーナを庇うように半身を前にした
頭に思い出されるのは、母上…つまり王妃閣下が1週間前に主に高位貴族や下位貴族でも一芸に秀でていたり優秀で眉目秀麗な令息を集めた日のことだ
…この字面だけだと母上が美しい少年が好きな危ない女性みたいに思われるだろうが断じてそれは無いので安心してほしい
ーーーーーーーーーー
「今日、集まってもらったのは他でもありません。貴方達は貴族の令嬢にそれはそれは人気な方々です
そして、学園への入学を控えていますね?
今日、王妃である私から貴方達に特別授業をしたいと思います。家庭教師などは教えてくれないことですが、必ず貴方達の役に立つと信じています」
そうして、女官に冊子を配るよう指示した母上には確固たる威厳と決意を感じられた。貴重な機会に参加者はみな厳かな気持ちで膝をつき謝辞を述べていたものだ
内容は『貴族令息のための毒婦対策要綱』
なるほど納得な授業だった。
本当にか弱い女性は何人も男を侍らせたりしないし、そもそも女同士の喧嘩に男が口出しするとロクなことにならない。王族でも平民でもこれは同じだと教わった
そして!!
目の前に!!
テキストの5ページに載っていた母上力作の仮想敵想像図そのままの売女がいる!
たしか子爵家が養子にした元孤児だかなんだかだったか?
まあ手口も予想がつくのだがな…クリスティーナに突き飛ばされたことにしたいんだろうがそうはいくか!
というか、授業通り庇護欲をそそる見た目に仕上げて来たようだが下卑た笑みを隠しきれていない…しかし、母上の授業が無かったら果たして気が付けていただろうかと考えるとゾッとしてクリスティーナの腰を抱く腕に力が入った
「で、殿下」
可愛い。赤くなって可愛い
私の婚約者は目の前で勝手に転んだ娼婦と違い本物の女神だ!
「なんで悪役令嬢が大事にされてんのよ!ふざけんなっ!!」
「悪役令嬢?どういう意味だ?まさか貴様クリスティーナのことを言っている訳ではあるまいな?」
「あ…えっとその…」
「いやぁ…王妃様のゼミでやった事案例がピンポイントで出るとは…」
「王妃が転生者なのっ?!ふざけんなっ」
ジョセフのつぶやきに反応する売女…しかし我が婚約者では飽き足らず国母である母上まで侮辱するか…というかてんせいしゃ?とはなんだ?…まあいい。
「不敬だ、連行しろ」
驚くほど低い声が出た。
子爵令嬢は入学式前に退学という前代未聞の快挙?を成し遂げた
さっさと退場してもらっておしまいだと思っていたのだが、わめき散らした内容の中に高位貴族の令息の家族しか知り得ないような過去の秘密や王族しか知り得ない機密事項などが散見されたため急遽城の地下牢で拷問することになった
結局子爵令嬢は私はひろいん?だとか、しなりお?がどうだとか意味不明なことわめき散らして獄死した…というのを宰相閣下からちらっと聞いた。背後が分からなかったのは痛いが女神な婚約者とならどんな困難にも打ち勝って国を支えていけると思う
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