ホットココア

6/7
143人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
私は思わず、カップを持つ手に力をこめた。 うそ……! 美佐子の言葉を、心中で否定した。 ――全然モテないダサ男。 他の女性の好みは分からない。 だけど、目の前にいるこの男性の顔立ちは、私の理想にピタリと一致している。私は、変な趣味なのだろうか。 「あの、どうかなさいましたか?」 無遠慮に見つめ返す私に、彼は戸惑いの表情になった。 「いいえっ、別になんでも……」 驚いてしまう。 この人が、仁科慶彦だったのか。 仕組まれたお見合い。なんてひどいやり方だと、反発したさっきまでの気持ちが吹き飛んだ。私はこんなにも単純だったのだろうか。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!