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ここはどこだろう――
翌朝、目を覚ました私は、布団の中でぼんやりとした。
何時だろう、仕事に行かなくちゃ……慌てて起き上がるが、うっすらと明るい障子の窓に目を留め、ここが旅先であるのを思い出した。
「ああ、よく眠った~」
温泉のおかげだろうか。体が芯から温まり、溜まっていた疲れも、すっかりとれた気がする。
「そっか、ここは民宿なんだ」
八畳一間に洗面所とトイレが付いただけの、何の飾り気もない部屋。だけど4泊の間、ここは私の居場所になる。そう、ゆったりとくつろげる居場所に。
布団を出ると、スウェットの上にカーディガンを羽織って立ち上がり、障子を開けた。
曇ったガラス越しに外を覗くと、夜が明けて間もなくのようで、まだ太陽はここから見えない。
雪は止んでおり、シンとした世界が広がっている。
「山の朝だ」
一人きりの部屋。知り合いが誰もいない土地。
毎日のスケジュールから解放され、自由の身である実感がふつふつと湧いてきて、私は自然に笑みを浮かべていた。
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