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『今、K市にいるんだって?』
ぎょっとした。なぜそれを知っているのか。
『一条さんが教えてくれたんだ。そこ、去年行ったスキー場に近いよな』
美佐子おおおおお……!
私は唇を噛みしめ、親切すぎる同僚を恨んだ。
「それで、話っていうのは」
感情的になるのを堪えた。今朝目覚めてからの良い気分が台無しになってしまう。冷静になれと自分に言い聞かせた。
『ごめん、悠美。俺が悪かった』
「……」
『彼女とは別れた。もう一度、お前とやり直したい』
立ち止まってしまった。
銀嶺は目の前にあるというのに。
『真面目に言ってるんだ。本当に、悠美には悪いことをしたって、ずっと後悔してるんだよ』
常套句だ。
浮気男の常套句だよと、どこかで誰かが叫んでいる。
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