雪かきとデートの誘い

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「お散歩に出かけたの?」 「はい。雪景色の中を歩いてみたくて」 「この辺りでも、こんなに積もるのは珍しいのよ。オーナーが雪かきしてたでしょう」 急にヒソヒソ声になり、恰幅のよい体を寄せてきた。 「ええ。大変ですね」 私は答えながらも味噌汁をひと口いただく。冷えた体に、じんわりと染み渡った。 「ううん、楽しそうだからいいのよお」 ごくりと飲み下してから、言葉の意味を確認する。 「楽しいって、雪かきがですか?」 小島さんは肩を揺すり笑っている。何が可笑しいのかよく分からず、私は首を傾げた。 仁科さんは雪かきが好きなのだろうか。雪の少ない土地で生まれ育ったのだろうか。そういえば、ご両親は横浜に住んでいると美佐子が言っていた。ということは、実家は横浜なのか……
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