145人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
思い巡らせる私に、小島さんはますます体をくっつけてくる。仕事に戻らなくても大丈夫だろうかと、ちょっぴり心配になった。
「それでね、昨夜はあなたにぺらぺら喋りすぎちゃって、パート頭には叱られたけどね、仁科さんは構いませんよ~って許してくれたのよ、うふっ」
仁科さんが民宿のオーナーになったいきさつの件だ。言われてみれば、客に提供するにしては、かなり個人的な話題である。
(でも、そうか。構いません……か)
ぽっと、胸の奥に灯りがともった。
小島さんは至近距離から私を見詰め、さらに何か言いたそうにするが、他のお客さんに呼ばれたので、名残惜しげに側を離れた。
私はテーブルの上に視線を戻す。焼き魚や卵焼きといった定番メニューを前に、箸を手にしたまま考えた。
仁科さんは私の来訪について、お見合いと認識しているようだ。昨日からの態度で、それは分かっている。小島さんのお喋りも、自分について知ってほしいから、話しても構わないと言ったのだ。
ということは……
私は茶碗をいきなり掴み、はしたなくもご飯を掻き込んだ。炊き立てつやつやの美味しい白飯だ。おかずにも箸をつける。特別珍しくもない料理だけど、どれも私好みの味付けであり、皿がすぐ空になった。
仁科課長が企んだ、お見合い計画。進めてほしいと、彼は思っているのだろうか……
最初のコメントを投稿しよう!