145人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
部屋に戻ると、窓の障子を全開にした。
外は晴れ渡り、とても明るい。降り積もった雪が太陽の光を反射して、まさに白銀の世界だ。
「ああ、なんて眩しいの」
まぶしすぎて、目を閉じる。瞼の裏に、先ほどの場面が残像のように浮かんだ。
信じられない。この私が積極的に、しかも昨日会ったばかりの男性をデートに誘うなんて。仁科さんは目を丸くしたが、「はい、ぜひお願いします」と、快諾してくれた。
「断られなくて良かった……」
障子を閉めて、部屋に向き直る。
朝食の間に布団が片付けられ、部屋の中央に小さな炬燵が設置されていた。昨日は部屋の隅に立てかけてあった気がする。
「嬉しいな」
アパートの部屋にも炬燵を置いてある。去年は出さなかったけれど、今年は年が明けてから使い始めた。
そう、時郎と別れてから。
――田舎染みてる。
それが、私の部屋を訪れ、炬燵があるのを発見した時の、彼の感想だった。
最初のコメントを投稿しよう!