鈍い女

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特に予定は無い。ただ家でぼんやりと何もせず、過ごすつもりだったから。 つまり課長は、私にこの民宿を紹介している。今、経営者であるその甥ごさんに、紹介の手紙を書いてくれたというわけで…… 白い封筒を見下ろし、それから課長に目を当てた。 丸いシルエットが示すとおり、温和で優しい課長である。高校を出て以来、親元を離れて暮らす私にとって、お父さんのような存在だ。 私のことを思って、提案してくれたのですね――感激してまたもや泣きそうになるが、私は笑顔を作り、ぺこりと頭を下げた。 「ありがとうございます。よろしくお願いします」 「それじゃあ早速、今週予約しようか」 「えっ」 スマートフォンを取り出して番号を押す課長に、私はびっくりする。 「あの、申請したのはひと月後で……」 「いい、いい。見たところ君は相当疲れている。そんな人に大事な経理の仕事を任せられるかね。すぐに行ってらっしゃい。そして元気になって帰ってらっしゃい。ああ、もしもし私だよ、名古屋の叔父さんだ」
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