雪かきとデートの誘い

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私の故郷では、炬燵という暖房器具を、どの家庭でも普通に使っている。 それを田舎染みてると言われた私は、故郷ごと否定された気がしたのだが、始まったばかりの恋愛に夢中だったので、すぐに片付けてしまった。 つまり私は、彼氏の一言で自分のアイデンティティーを片付けてしまったのだ。 炬燵に入って、天板に顎をのせた。目の前には蜜柑が三つ、小さな籠に入っている。素敵過ぎる、民宿銀嶺のサービスの数々。まるで私の心を全て分かっているかのような。 クスッと笑う。 蜜柑を手に取って撫でさすり、爽やかで甘い柑橘の香りを楽しむ。 「もう、好きにしてもいいんだ」 私は後ろに寝転んで、心の底からリラックスした。 午前中は炬燵でごろごろしながらテレビを見て、ちょっとだけ眠って、散歩した。 中央アルプスも南アルプスも、青い空のもと、白く連なっている。 「来て良かった」 あらためて課長に感謝する。お見合いを画策されたことも含め、もうなにも文句などなかった。 景色を堪能した後は、街のお蕎麦屋さんで遅い昼食をとった。 自由に時間を使い、自由に行動する。贅沢で伸びやかな時間を私は過ごした。
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