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「あの、いや、矢沢様を待っていたとか、そういうわけではありませんよ。私はただ、雪かきを……」
必死に弁解している。図星だったらしい。
「ごめんなさい、もう、いいですから」
恥ずかしいやら可笑しいやらで、彼に背を向けた。
フロントで鍵を受け取ると、そそくさと部屋に戻る。残された彼は多分、呆然としているだろう。
昨日出会ったばかりの男性。
それなのに、雪かきをする彼を見た時、お帰りなさいを聞いた時、懐かしい気持ちがした。
こういうの、なんて言うんだろう。
しあわせ――?
本日二度目の温泉に浸かっていると、自然に答えが浮かんだ。
身体の芯まで温もって、ずっとここに居たいと感じた。
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