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三日目の土曜日
週末を迎えた民宿は、すべての部屋に予約が入っているとのこと。冬場はスキー客が多く、リピーター率も高いようだ。
「オーナーが風呂を改修したでしょう。その効果で、温泉目当てのお客様の予約がいっぱいなのよ」
朝食後、暖炉のあるロビーで小島さんとお喋りした。彼女はこのあと一旦家に帰り、午後から再び出勤するらしい。
「ゴホン!」
パート頭の重森さんが、大きく咳払いしながらロビー横を通り過ぎた。
「いっけない」
小島さんが、ぺろりと舌を出す。
重森さんは62歳、小島さんは40歳。年齢的にも親子のような関係であるらしく、小島さんは、毎日のように叱られていると笑った。
「とにかくこの宿もね、残る心配事は一つだけ。それがどうにかなればね」
手袋をすると、彼女は椅子から立ち上がった。
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