鈍い女

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2月10日 木曜日。 私は今、仁科課長が紹介してくれた民宿に向けて車を走らせている。 フロントガラスをかすめるのは、雪。中央自動車道を北上しながら、この冬一番の寒気が押し寄せる真冬の空を窺った。 去年の今頃は、時郎の運転する4WDの助手席に座り、この道を走っていた。 あれは確か日曜日で、ちょうどバレンタインデーだった。始まったばかりの恋にうきうきしながら、私は笑っていた。 二人で過ごすスノウリゾートを楽しみにして。 「楽しかったなあ」 時郎は運動神経が良く、スキーも上手だ。 彼は上級者コースの頂にリフトで一気に上がり、滑降する。私は中級と上級の間くらいの腕しかないので、彼には自由に滑ってもらった。 ――思い切りが悪いよな、悠美は。 コブの多いところは怖くて慎重に滑る私に、彼は苦笑した。 確かにそうかもしれない。私は中級者コースにデビューするのにも、相当な時間をかけている。
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