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「結局、置いてかれちゃった」
考えれば考えるほど違和感のある時郎との付き合い。
だけど、楽しかったのは本当だ。彼を好きだったのも本当だ。だから、悲しいのだろう。
私は感傷に浸るを止めて、サービスエリアに立ち寄り、お昼ごはんを食べた。
休日は混み合う人気のSAだが、今日は平日なので空いている。
「お腹も膨れたし、そろそろ出発しようかな」
宿に入るには、早い時間である。だけど、雪の降り具合を見ていると、のんびりするのはまずい気がした。
「やっぱり、行こう」
立ち上がって歩きかけた時、スマートフォンが鳴動した。
「あっ、美佐子からだ」
発信者は経理課の同僚だ。仕事のトラブルでもあったのかと思い、急いで応答する。
「はい、もしもし」
『悠美、今どこにいるの?』
どんよりとくぐもった声。いつもは賑やかな喋り方をする彼女なのに、妙な感じがした。
オフィスではなく、どこかに隠れて電話しているといった雰囲気だ。時計を見れば、昼休みはすでに終わっている。
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