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「今はね、えっと、駒ケ岳サービスエリアだよ。何かあったの?」
『課長に紹介されたでしょう、民宿「銀嶺」』
ぎんれい――そう、それが宿の名前である。冠雪したアルプスの峰々をイメージした屋号とのこと。
「うん、銀嶺に泊まるよ」
『気をつけなさいよ』
美佐子はますます低い声になった。
「気をつけろって……どういうこと?」
私は建物を出て、雪が降り続く駐車場を眺めながら話す。早く車に戻らなくてはと思いながら。
『あのね、仁科課長の甥ごさんなんだけど、ちょっと変わった人らしいのよ』
甥ごさんというのは、民宿のオーナーである。
「変わった人?」
『もうすぐ30歳になるんだけど、2年前に突然、勤めていた自動車メーカーをやめて、民宿の経営を始めたんだって』
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