鈍い女

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そんな事情は知らなかったが、世の中に珍しくない話だと思う。というより、かえって面白そうな人ではないか。 きっちりとしたコースでは物足りない人なのだ、きっと。 「それで?」 『聞いた話ではね、民宿は真面目にやってるみたいだから、それはいいんだけど、これまで浮いた話のひとつもなくて……ううん、ぶっちゃけた話が全ッ然モテないダサ男で貧乏で、嫁の来手がないから心配してるらしいのよ、課長が』 「ふうん、そうなんだ」 課長とはそんな話をしていないので初耳だ。でも民宿の経営者がどんな人だろうと、私には関係ないと思うが。 「課長も心配だろうね」 普通に返事したつもりだが、なぜか美佐子が焦れたように言う。 『それでね、横浜に住む彼の両親から、そっちで相手を見つけてくれって頼まれてるんだって、課長が!』 「……」 課長を強調する彼女。 その課長に民宿をすすめられ、私はそこへ行こうとしている。
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