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残された時間
母さんの母さんである、ルミばあちゃんが倒れた。
「あんたもいっしょに来て。何かと大変そうだから。」
母さんは私を高校まで車で迎えに来て、いっしょに隣町のマサじいちゃんとルミばあちゃんの家に向かう。夕方の5時頃。
ルミばあちゃんは85歳。脳梗塞だという。地元の病院に入院するというので、母と私は入院に必要なバスタオルや洗面道具、下着などを用意し病院へ向かう。病室に着くと、マサじいちゃんが、疲れた顔で椅子に座っていた。ルミばあちゃんは点滴して眠っている。
それから半月位して、ルミばあちゃんが退院するという。意識はハッキリしてるけど、ほぼ寝たきりのルミばあちゃんが退院させられるのは困る、と母さんは病院の窓口で文句を言った。
「治療の必要な患者さんに入院していただくために、治療が終わった患者さんには退院していただく決まりなんです。」
病院の決まりなのだから仕方がない。
母さんは不満を口にしながら退院の準備をしていたが、マサじいちゃんは嬉しそうだった。
「どうする?この際、二人で老人ホームに入る?」
母さんは、イライラしながらマサじいちゃんに尋ねた。
「いや。オレが、ばあさんの世話するから。大丈夫だ。」
マサじいちゃんは笑顔だった。
「父さんだって、もう86歳だよ。腰痛い、ヒザ痛いって言いながら、一人で母さんの世話なんて、できる訳ないでしょ。」
「大丈夫だから。オレは、そうしたいんだ。今まで、ずっとルミコに苦労かけて来たんだ。もう残された時間は何年もない。オレの気の済むようにさせてくれ。」
結局、マサじいちゃんは、ルミばあちゃんを家に連れて帰った。家に着いて自分のベッドに横たわったルミばあちゃんは安心したように言った。
「あ~、家は落ち着く。もう家に帰って来れんかと思った。」
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