トライアングル~小早川~

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ

トライアングル~小早川~

鈴とは、小さい頃からずっと一緒にいた。 俺達は所謂幼なじみってやつで。 鈴の一番近くにいる男は、絶対に俺だと確信していた。 「今日、金城君と一緒に帰ろうと思う。」 「……約束、したのか?」 「して、ないけど、勇気出すことにしたの!」 その確信は、きっと間違っていなくて。 「ふーん。ま、頑張れよ。」 いつだって、「友達」として鈴の一番近くにいたのは、俺だ。 「ありがとっ。でも、二人は絶っ対無理だから、ちゃんと待っててね!」 「おう、分かった。」 ただ、「友達」が「恋人」に昇格することはない。 あいつが、金城奏多がいる限りは。 「好きだ……。気付けよ、馬鹿っ……。」 鈴と金城の教室の前でそんなことを溢したって、この教室に漂っているであろう甘い雰囲気の中に、俺は場違い過ぎる。 いや、この教室だけではない。 鈴と金城の間に、俺がいること自体間違っているのかもしれない。 だから、俺は……。 「っ……帰ろ。」 そうして教室から背を向けた時。 「藍人、一緒に帰ろ?」 鈴が、心底傷付いたような顔をして俺の元に戻ってきた。 正直、嬉しかった。 金城に取られなかったという事実に、安心していた。 「……ああ、良いよ。」 俺は、最低な男だ。 鈴の幸せが、俺の幸せなはずなのに。 帰り道に「私の彼氏になってよ」と言われた時、うっかり「良いよ」と言いそうになった。 好き。 大好き。 愛してる。 「……頭、冷やせ。」 でも、この恋は叶ってはいけないんだ。 鈴の幸せは、俺といることではないから。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!