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トライアングル~小早川~
鈴とは、小さい頃からずっと一緒にいた。
俺達は所謂幼なじみってやつで。
鈴の一番近くにいる男は、絶対に俺だと確信していた。
「今日、金城君と一緒に帰ろうと思う。」
「……約束、したのか?」
「して、ないけど、勇気出すことにしたの!」
その確信は、きっと間違っていなくて。
「ふーん。ま、頑張れよ。」
いつだって、「友達」として鈴の一番近くにいたのは、俺だ。
「ありがとっ。でも、二人は絶っ対無理だから、ちゃんと待っててね!」
「おう、分かった。」
ただ、「友達」が「恋人」に昇格することはない。
あいつが、金城奏多がいる限りは。
「好きだ……。気付けよ、馬鹿っ……。」
鈴と金城の教室の前でそんなことを溢したって、この教室に漂っているであろう甘い雰囲気の中に、俺は場違い過ぎる。
いや、この教室だけではない。
鈴と金城の間に、俺がいること自体間違っているのかもしれない。
だから、俺は……。
「っ……帰ろ。」
そうして教室から背を向けた時。
「藍人、一緒に帰ろ?」
鈴が、心底傷付いたような顔をして俺の元に戻ってきた。
正直、嬉しかった。
金城に取られなかったという事実に、安心していた。
「……ああ、良いよ。」
俺は、最低な男だ。
鈴の幸せが、俺の幸せなはずなのに。
帰り道に「私の彼氏になってよ」と言われた時、うっかり「良いよ」と言いそうになった。
好き。
大好き。
愛してる。
「……頭、冷やせ。」
でも、この恋は叶ってはいけないんだ。
鈴の幸せは、俺といることではないから。
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