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「そっか。後で雑炊持っていくわ」
お暇するタイミングを見事に逃してしまい、夕里は悟に手を引かれるまま食卓につく。
「うちのご飯すっごく美味しいんだよ! えーっとね、おすすめはかぼちゃのコロッケと、卵焼きと生姜焼きとね……」
夕里の取り皿にはかやのやのお惣菜のおすすめがたくさん置かれていく。
「俺、出来たら甘い味つけのおかずがいいなー……なんて」
「舌もお子様なんだな」
「はあ? お子様だと!? ていうか舌も、ってどういう意味だよ!」
夕里がぎゃんぎゃん騒ぐと、茅野は人差し指を立てて「静かに」とジェスチャーする。
売り言葉に買い言葉を発したのは夕里だが、仕掛けてきたのは茅野だ。
さすがの理不尽さに、夕里は口を尖らせる。
「はいはい。ごめんな。夕飯いくらでも食べていっていいから」
普通の食事なんてした経験は数えるくらいしかないし、普段箸は使わない。
持ち方は合っているだろうかとドキドキしながら、かぼちゃのコロッケを割って中を確かめる。
綺麗な山吹色にそぼろの肉が見え隠れしている。
「夕にい、ご飯の前はいただきますってするんだよ?」
「え? ……ああ、そっか。ごめん、忘れてた」
手を合わせていただきますをする習慣がないため、すっかり失念していた。
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