* Sweet.1 *

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こんなに頭を使ったのは、懇談で進級が危ないと担任に言われた日以来かもしれない。 「夕ご飯、用意出来たから持ってくる。悟、茶碗と箸出しておいて」 「はーい」 下の階から茅野の声が聞こえてきて、悟はたったっと2階へ降りていった。 夕里もノートと教科書をバッグにしまい、舞を起こさないように注意しながら悟の後ろをついていく。 ──わ、すごい量。何人分だよ、これ。 大皿に盛られた料理に圧倒される。 俵型の小さめのコロッケや菜の花の白和え、甘酢のあんがかかっている肉団子など、量も種類も豊富だ。 普通の成長期真っ只中の男子高校生なら、目の前のおかずと一緒に白ご飯3杯は余裕でお腹に収まりそうだ。 しかし、夕里の主食は甘いものなので、美味しそうな匂いにお腹の虫は反応しない。 「今日夕ご飯豪華だね。夕にいが来てるから?」 「そう。夕飯食べて行けって親が張り切ってつくってた。食べていくだろ、夕里?」 茅野が明らかに1杯分以上のご飯を茶碗に盛って、夕里に手渡してくる。 「そんなに食べない」と言うと、茶碗の中のご飯はようやく並盛りくらいになった。 「舞と悟のこと、見てくれてありがとうな」 「2人ともいい子だったよ。舞ちゃんは寝たところだから、まだ起こさないほうがいいと思う」
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