* Sweet.1 *

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「……何見てんの」 「食べるのに必死だなぁ、って思って。かやのやの惣菜気に入った?」 ふん、と素っ気なく答えるつもりだったが、売り物であるお惣菜をご馳走になっている手前、生意気な態度で出るのは少し引っかかる。 素直に「美味しい」と言うと、茅野は嬉しそうに笑った。 × × × 気に入ったかぼちゃのコロッケとさつまいもの甘露煮を、茅野は容器に入れて包んでくれた。 茅野の両親に「ごちそうさまでした」とお礼を言って、夕里は帰路に着く。 ピークの時間は過ぎたものの、1階のかやのやにはまだ人がぽつぽつといる。 「お家、大変そうだな。お母さんとお父さんどっちも働いてるんだ。茅野も働いてるし」 「俺も経験積みたいから手伝ってるだけだし。でも、売り物には触れないし調理は出来ないから、言われたものをパックに詰めたりお会計するだけ。小遣いはもらってるけど」 自分の家でアルバイトをするなら人間関係は気遣わなくて楽そうだ。 夕里も毎日のように流行りのスイーツ店巡りをするので、財布にあるだけ使ってしまうしいつも中身は寂しい。 アルバイト先に考えていたアパレルショップは時間帯が合わないと断られ、甘いもの目当てで応募したファミレスは髪の色を染め直してください、と門前払いだった。
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