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「相変わらず機械に強いなぁ、千里は。養ってくれる弟がいて、お兄ちゃん幸せ」
「兄貴が世間知らずなんだよ。早く自立して俺の負担を減らしてくれる?」
千里に毒吐かれて、夕里はう、と言葉をつまらせる。
──褒めたら「お兄ちゃん大好き。お兄ちゃんのために頑張るね」って言ってくれたのに、今は口だけじゃなくて行動で示せ、だもんなぁ。
九重家のヒエラルキーでは、働いて一家を支えている母親が頂点に座していて、その下には九重家の家事全般を担う千里、最底辺がふらふらと遊んでいる夕里だ。
あらかじめ蒸していた野菜をココット皿の底に並べて、生クリームのたっぷり使ったルーを回しかけると、千里お手製のシチューが出来上がる。
とろっとした口当たりのいいシチューは甘く、夕里の大好物だ。
じゃがいもや人参、玉ねぎはなかなかに大振りだけれど、芯まで熱が通っていて素材の甘味がよく出ている。
「やっばり千里のつくるシチューは美味しいな。好き」
「そんなんで水に流してあげないからな、バカ兄貴」
「あっ、千里も惣菜食べな。茅野のところのかぼちゃコロッケ、すっごく美味しかったから!」
「ふーん……俺を放っておいて美味しいもの食べてきたのかよ」
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