* Sweet.5 *

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* Sweet.5 *

デートプランはほぼ夕里の希望通りに決まり、午前はひたすらスイーツ店や新しく出来た施設をまわって、午後はゆっくりと甘いもの片手に散策する予定だ。 九重家の家主は今週末も不在のため、相談なしに茅野を泊めても怒られないのだろう。 雑誌で一目惚れしたグレーのタータンチェックのパンツに、襟元に黒のラインと胸元にブランドのロゴワッペンがついている白のニットを着て、無難なネイビーのダッフルコートを羽織って出かける。 かっちりとした格好に、派手めの髪色は少し浮き気味な気がして、ファーのついたベレー帽で誤魔化した。 いつもの学校の制服とほとんど変わらなくて、失敗したな、と思う。 引き返して着替えてくるような時間はないので、諦めて集合場所へ向かった。 電車に揺られながら頭の中ではずっと茅野のことを考えていて、そのところどころの切れ端で「わああぁ……」と叫びだしたくなる衝動に駆られる。 ──いっつも俺ばっかりが茅野にきゅんきゅんさせられてずるい……! 俺だってやれば出来るんだからな……今日は逆に俺がきゅんきゅんし返してやる……! スペックでは完敗しているため、夕里に出来るのは捨て身の力押しだ。
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