1910人が本棚に入れています
本棚に追加
/244ページ
* Sweet.2 *
──かぼちゃコロッケと卵焼きと、さつまいもの甘露煮……うまかったなぁ。
昨夜食べた惣菜の味を思い出して、まだ2限目だというのにお腹はきゅるきゅると鳴った。
売り物なのだから、また食べたいと思うくらい美味しいのは当たり前なのだけれど。
──茅野は毎日、あんなに美味しいお弁当食べてるんだよなぁ……羨ましい。
甘いデザートの妄想から、かやのやの惣菜にシフトしただけで、授業中の過ごし方は特に変わらない。
上の空でも起きているなら注意もされず、適当に黒板の文字をノートに書き写した。
やっと退屈な時間が終わって、次の授業を確認したところで夕里はさっと青ざめる。
「ゆうちゃん次の時間体育だよ。遅れたらグラウンド1周増えるんだから、早く早く」
「さ……先行ってて。ちょっと隣の教室行ってくる」
──さ、最悪っ! 体操着持ってくるの忘れた……。
見学する場合、500文字の見学レポートを提出しなければならない。
勉強嫌いな夕里は何としてでもそのレポートを回避したくて、体育の授業から帰ってきたばかりの隣のクラスへ向かう。
「九重くん可愛いー」とマスコットキャラの来訪を歓迎する声を受けながら、夕里は一直線に唯一の知り合いの机を目指した。
最初のコメントを投稿しよう!