そしてついに

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「で、どうしたの?」 「那央と一緒に過ごしたくて」 一緒に過ごす。 しかもこの時間から。 それもわざわざ希さんの部屋で。 この人は急に何を言い出すのだろう。 そんなことをしたら私がどうなるか分かっているのだろうか。 「えっ、いや……別にいいけどさ。どういうこと? なんか今日希さん変じゃない?」 「えーと……、今更どう言ったらいいのか分かんないんだけど」 すると。 突然首に腕を回され、柔らかい身体が私に押し付けられた。希さんの思い掛けない行動に身体が硬直する。 「……え、希さん?」 驚きで身動きできずにいる間も希さんの身体はどんどん密着してくる。 希さんが変だ。普段一緒にビールを飲んでいてもこんなに変になることはない。 その後も希さんの誘惑は止まらなかった。 私の耳元で吐息を漏らしながら首筋に唇で触れてくる。そんなことをされたら身体がゾクッと反応してしまう。 酒か。きっと酒のせいだ。 ほっぺたツンツンすら許さないガードの固い希さんがシラフでこんなことをするはずがない。 しかし、多少頭が混乱していても身体は正直だった。私の腕は勝手に希さんの腰を引き寄せる。 至近距離で私を見つめてくる瞳は少し潤んでいる。首筋をなぞる手つきがいやらしい。私は上がる息を必死に抑えながら、このまま押し倒してしまいたい衝動と戦った。 本当はこのまま抱いてしまいたい。だけど希さんの真意が分からないまま安易にそんなことをしてはダメだ。 しかし。 私の視線を釘付けにしている唇が少しずつ近付いてくるのを見た瞬間。 わずかに残っていた私の理性はフッと消え失せた。
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