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五十嵐さんのリクエストで訪れたのは、若者ばかりが集まる落ち着いた雰囲気のダイニングバー。オープンしたのが最近ということもあり、平日夜でも満席に近い状態だった。
私たちは運良く座れたカウンター席の一番奥で女同士の会話を楽しんでいた。
「彼氏なんて別に今更いらないかな。結婚願望ないし。ブライダル業界の人間が言うのもアレなんだけどさ」
「でも一人だと寂しくないですか?」
独身の女2人が話すとなるとこの手の話題は避けられない。私から振ることはなくてもほぼ確実に相手が切り出してくる。
そして、この展開になった時は、いつも少し躊躇しながらこの事実を相手に伝える。
「同居人いるからね」
「ん? なんだ同棲相手いるんですか」
「うん。相手女だけど」
「えっ!? もしかして彼女ですか!?」
「いや違う違う。ただのルームシェア」
「なんだぁ。でもそれ楽しそうですね。結婚よりいいかも」
「私には合ってると思うよ。相手にもよるんだろうけど」
夏の空みたいな色のカクテルを飲みながら同居人の顔を思い浮かべる。
彼女は一昨日から出張でいない。
今日、私が帰る頃には家にいるはずだ。
「どんな人ですか?」
「うーん……。ドッペルゲンガー? 内面的な意味でだけど。初対面でこの人不思議だわーって思ってさ。なんか他人なんだけど他人じゃないんだよ」
「えっ、それって運命の相手じゃないですか!」
「多分そうだね。同性でもそんな人いるんだなーと思った」
「写真とかないんですか?」
「あるよ」
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