運命の同居人【希視点】

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スマホをバッグから取り出し、同居人と出掛けた先で撮った画像を表示させた。 それを五十嵐さんの前に差し出すと、ちょっと大袈裟といいたくなるほど目を見開いて画面を凝視した。 「えっっ!! めっちゃイケメン美女じゃないすか!!」 「うん。大体みんな驚くね」 「……いや、あり得ませんって。普通に付き合っていいですよこんな人」 「だからそういうアレじゃないって。ただの運命の同居人」 五十嵐さんは私のスマホを凝視したまま目を離さない。そのまま勝手に画面をフリックし始めたのを見て、さりげなく五十嵐さんの手からスマホを奪い取った。 「年いくつですか?」 「私の6つ下。今年29かな」 「どこで出会ったんですか?」 「何年か前のセミナーで」 「へー……。私なら絶対ときめくなぁ。同居なんかしたらタダじゃ済まない自信あります」 「え、そ、そうなの? だって女だよ?」 「いやこれは性別の壁崩壊でしょ。普通に統一しましょうよ課長」 「いや意味分かんないわ」 同居人の名は三浦那央。5年前に会社指示で参加した管理職者向けのセミナーで知り合った。 セミナーの内容が内容だけに女性参加者は少なく、総勢40名ほどの参加者の中で女性は私を含めて5名程度。その中でも那央は一際目立つ容姿で、一見して『自分とは住む世界の違う人』という印象を受けた。 170センチに届きそうなスレンダーな長身と、サラサラのロングストレートヘア。そしてこれでもかというほど整った顔立ち。モデルだと言われたらすぐに納得してしまうくらいの容姿だったため、先入観で勝手にアパレル業界の女性だと思い込んでいた。 グループディスカッションでたまたま同じグループになり、自己紹介で彼女の職業がフラワーショップのバイヤーだと聞いた時、容姿とのギャップに少し驚いたのを思い出す。
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