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「……あの、藤沢さんでしたよね?」
「はい。藤沢希です。先程はありがとうございました」
こうして見るとやっぱり優衣に雰囲気が似ている。私好みの清楚な美人だ。
それにしても心臓がまずいことになっている。多少アルコールの影響もあるかも知れない。男性たちがひっきりなしに注いでくれるビールをチビチビ飲み続けていたせいだ。
「こちらこそありがとうございました。ディスカッション楽しかったです。……あ、三浦那央です」
あらかじめ用意しておいた名刺入れから名刺を差し出すと、藤沢さんからもすぐに名刺が差し出された。
こういうプライベートに近い場での名刺交換はあまり経験がない。座ったままでわりと適当になってしまったけど、藤沢さんは全然気にしていない様子だった。
「三浦さんはお花屋さんなんですね」
「はい。主にバイヤーやってます」
「バイヤーっていうと、やっぱり日本全国飛び回ってるんですか?」
「時々。年一くらいで海外に行ったりもします。海外でしか手に入らない品種もありますから」
「え、すごい! 憧れます。そういうお仕事」
藤沢さんの反応を見て心の中でガッツポーズを作った。やっぱり女性は海外が関わる仕事には食い付きがいい。
もう自分の表情なんか気にしていられない。この際だからこのまま素で行くことにした。
「藤沢さんはブライダル関係のお仕事を?」
「ええ。プランナーのサポートが主な仕事です」
「じゃあ私の仕事とどこかで繋がってるかも知れないですね」
「あ、確かにそうですね。面白いなぁ」
そこから話は弾み、話題はお互いのプライベートに及んだ。
一番知りたかった既婚者かどうかの質問には望んでいた通りの答えが返ってきた。年齢は私の6歳上の29歳。もう少し若いと思ってたけどそれはまあいい。そしてどうやら彼氏もいない様子。
更にお互いの住まいは車で20分圏内。もしこの先プライベートで会う機会が出来ても安心だ。
「あの三浦さん、多肉植物も詳しいですか?」
「はい。それなりには」
「実は欲しい品種があるんですけど、なかなかお花屋さんに出回ってなくて」
その上藤沢さんは多肉女子。
ここで重要な情報を得た。
植物の話なら大抵合わせることができる。これは植物好きが相手ならかなりの強みだ。
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