覚悟を決める

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杉本農園を出たあとは他の仕事をこなしてホテルに一泊した。その翌日は予定されていた仕事を終えたあと、とある目的のために一軒の生花店へ向かった。 とある目的とは、希さんに豪華な花束を作って贈ること。実はあれから『交際を申し込む時にどんな伝え方をするのがいいか』と色々考えた。 そして、花屋の自分に出来ることといえば自作の花束を贈ることだと答えを出し、だったらプロポーズみたいなパフォーマンスをしようと思い付いたのだ。 それを思い付いてから花束にどんな花を使おうかとあれこれ考え、清楚な希さんには清潔感のある青い花が似合うだろうと思って青い花を調べまくり、その結果『ブルーローズ』にたどり着いた。 その昔、ブルーローズの花言葉は『不可能』だった。青い薔薇を作るのは不可能とされていたからだ。しかし技術の進歩によって作り出すことに成功し、花言葉は『夢かなう』に変わった。無理だと思っていた想いが叶ったのだ。 そんな花言葉の変遷に自分たちの状況と通じるものを感じ、希さんに渡すならもうこれしかないだろうと思ってブルーローズを選んだ訳だ。 欲しい本数は30本。自分の店でそんな本数を消費したらさすがにツッコミが入るだろうし、通販だと希さんにバレてしまうリスクがある。だからこうして他の場所で直接調達するしかないのだ。ちなみに天然物は入手が難しいので今回は諦めることにした。 そして目的の店に到着し、電話で予約していた30本のブルーローズを適当にラッピングしてもらった。 実は今回、気合いを入れて新調したフォーマルスーツも持って来た。荷物が増えて邪魔だけど、愛する人のことを想えばそんなことはどうでもいい。 これから、このブルーローズを持って自分の店に寄り、白系の花と合わせて豪華な花束を作る。そしてこのスーツに着替えて希さんの待つ自宅へ帰る。これは絶対に失敗できない。
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