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そして翌朝。
もちろん寝坊した。
普段からスマホのアラームに頼ってるクセに、藤沢さんのことで浮かれてしまってアラームのことをすっかり忘れていた。
現在9時15分。
あと20分でホテルを出ないと新幹線の時間に間に合わない。
私はそこから2分で着替えて15分で洗顔、歯磨き、化粧、髪のセットとホテルのチェックアウトを終え、残った3分でコンビニに寄ってモバイルバッテリーを買うことにした。我ながら仕事が速い。
普段はあんまりミスしない方だけど、何か1つのことに囚われるとそのことばかり考えて他のことが疎かになってしまう。熱に浮かされやすいのだ。
例えば、高校時代に優衣に恋していた時もそうだった。彼女が『あれが欲しい』と言えば禁止されていたバイトを始めてプレゼントしたり、『旅行に行きたい』と言えば交通機関を手配してエスコートした。
学校の成績が良くなかった私が英語を話せるのも、優衣の『英語喋れる人ってカッコいいですよね』の一言で英会話スクールに通い始めたせいだ。
ちなみに、専門学校時代に付き合っていた彼氏に関しては全くそんなことはなかった。表向きは恋人らしい振る舞いで接しつつも、彼の一挙一動で私の心が動くことは一切なかった。
何とかギリギリ新幹線の時間に間に合い、ガラガラの自由席に座ってホッと一息つく。
あんまり頑張りすぎるのは良くない。
どうせ空回りする。
そう思い直して、藤沢さんとの約束に向けて綿密な計画を立て始めた。
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