いけない再会

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2人で飲み始めて2時間くらいが経った。 チビチビ飲んでいた2本目のビールがそろそろ底をつく。でももうこれ以上は飲めない。私が正常な思考を保てる限界が缶ビール2本なのだ。 優衣の方は飲むペースが速く、既に缶チューハイを5本も空けている。優衣の酒の強さは知らない。接点があった時期のほとんどが高校時代だから今まで一度も優衣と酒を飲む機会はなかった。 今のところ口調に変化はないし、会話も違和感なく成り立っている。でも顔が少し赤くなっているのは確かだ。 「……あの、那央さん」 「ん?」 「付き合ってる人いないんですよね?」 「まぁ、いないね」 「なんか歯切れ悪ーい。実はいるんじゃないんですか?」 そして急にこんなことを言い出す。外から分かりづらいだけで意外と酔っているのかも知れない。 「なんでそんな突っ込むの……。ホントにいないってば」 「じゃあ、私と付き合ってください」 「まーたそういうこと言う。相変わらず軽いなぁ優衣は」 「あはは冗談ですよー。っていうか好きな人もいないんですか?」 ここで嘘をつくのは嫌だった。私は希さんが本気で好きだ。これまで自分に嘘をつくことなく一途に彼女を想ってきた。希さんが女性であろうと関係ない。 「いるよ」 「えっ! そうなんだ……」 優衣は驚いた顔をした。そんなに意外だったのだろうか。 ここでふと思った。優衣にこう言ってしまったら絶対に突っ込んだ質問をされる。正直あんまり聞かれたくはない。だったら先に事実を伝えた方がいい。 「けど多分無理。私じゃ相手にならない」 「え、那央さんでも? もう告白したんですか?」 「してないけど、一応そういう態度は見せてるんだよね。でも気付いてないっぽい」 「告白したら?」 「いや、無理な相手だから。今の関係壊すのイヤだし」 すると隣に座っていた優衣が、飲んでいた缶チューハイをテーブルに置いて私に寄り添ってきた。急に何事かと驚いていると、優衣は私の腕に腕を絡め、更に指をいやらしい感じに絡め、その上わざとらしく胸まで押し付けてきた。 いや、まさか。これはいつもの冗談だろう。やっぱり優衣は酔っているのだ。
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