暗い私

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希さんにこれ以上変な心配はかけたくない。私のせいで希さんまで暗くなってしまったら一緒に住んでいる意味がない。 だからとりあえず『希さんをもっと笑わせるには』という議題でベッドに横になって考えることにした。それにしても最近の私は考え過ぎだ。もう一生分の脳エネルギーを放出してしまったような気がする。 するとその時、枕元のスマホが突然ピコーンと音を立てた。何かを閃いたような鋭い音にびっくりしてベッドから飛び起きてしまった。聞こえやすい音にしようとこれに設定したけどやっぱり猫の鳴き声に戻すことにした。 そしてメールの送信者の名前を見て更に心臓が飛び跳ねた。 優衣だ。あれから1週間が経っている。 『今電話してもいいですか?』 あの日の出来事が頭の中でリフレインして、また複雑な感情が蘇ってくる。 『那央さん、元気でしたか?』 「まぁ普通」 そして結局電話OKと返信してしまった。なんだかんだ綺麗事を言っても結局人間は一次的欲求には抗えない。結局私が欲しいのは人肌だ。満たされない心を人肌に癒されたいのだ。 『この前の返事、まだハッキリ聞かせてもらってないですけど』 「……ん? この前のって?」 『やだなぁ、そんなとぼけちゃって。セフレ契約ですよ。イヤですか?』 「っていうか、私意外と純情だし……」 『そうかなぁ? そうは見えなかったですけど。那央さんって結構◯◯◯の◯が◯◯ですよね?』 優衣の言葉があまりにも具体的過ぎるので頭の中で伏せ字にすることにした。事実だとしても言葉でハッキリ聞かされたくはない。 「うーん……、少し考えさせて。まだ頭の中が整理できてなくて」 『何か不都合があるんですか?』 「だからさ、片想いの相手がいるって言ったよね? あの人に示しが付かないっていうか」 『でも無理なんでしょ?』 「……うん。多分ね」 『じゃあこうしましょうよ。もし万が一那央さんの片想いが叶ったら契約解除ってことで』 都合がいいといえばその通りだった。前にも自分の中で答えを出した通りこれは別に浮気ではない。むしろ希さんの前で笑っているためには割り切ってこういう契約を結んだ方がいいのかも知れない。 「でもさ、優衣はそれでいいの?」 『いいですよ。那央さんも知っての通り私はただのビッチですから』 「……開き直ったね」 『だって事実ですもん。さすがに自覚がなきゃヤバいですって』
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