愛とは

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それにしても、優衣のこの質問は完全にブーメランだ。そもそもこの契約を提案してきたのは優衣の方。お互いの事情に干渉しないというのが暗黙の了解だったはずだし、優衣自身もそれを納得の上で提案してきたはずなのだ。 同じ質問を優衣にしたらどんな答えが返ってくるのだろう。急にそんな好奇心が湧いてきた。 「じゃあ優衣の方はどうなの? なんで私とこんなこと続けてるの?」 「言ったじゃん。私ただのビッチだって」 「要は欲求不満を解消したいだけってことだよね?」 「どうかな。今は……」 と、優衣はそこで言葉を飲み込んだ。いつもと少しだけ雰囲気が違う気がする。 「もう周りの目ぼしい男は食い尽くしたしね。あと残ってる人那央さんしかいないんだよ」 そして私はまた優衣の言葉に胸がガーンとやられた。やっぱりいつも通りの優衣だった。食い尽くした食べカスが私なのだ。別にそれでもいいけど、店長のついでの件といい、私はつくづく愛されない人間らしい。 「那央さんの周りにイイ男いない? いたら紹介して欲しいな」 「え、えーっと。……あっ、年下の男はどう? 可愛い顔の怯えた子羊みたいな」 「うーん。やっぱり男らしい堂々とした人の方がいいかな。年下は別にいいんだけど」 そして私は自分の発言を悔やんだ。 咄嗟のこととはいえ、汚れのない純粋な神尾氏を一瞬でも汚れた世界に誘おうとした自分に心底嫌気が差した。私も既に汚れ切っているのだろう。 いや、もしかしたら神尾氏もああ見えて意外と遊んでいるかも知れない。実際、清楚に見えて意外と……な優衣の例もある。だとしたら店長も真っ青だ。 「まぁいいや。今度いつ会える?」 「出張の予定が分からないからなんとも」 「……分かった。また連絡するよ」
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