小さなミートショップ

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ここまで来ると私はもう多肉植物の人だ。希さんと出会ってからやたらと多肉植物に縁がある。 ということで、来月から予定されている私の昇進プロジェクトでは当たり前のように多肉植物を選ぶことになった。店の隅に設けられた3畳分の広さの空間を使い、私のセンスで仕入れた多肉植物を私のセンスで配置しなければならない。 私の助手に選ばれたのは、最初に聞かされていた通り神尾義将氏だ。これから彼との共同作業で店に新たなコーナーを作り上げる。神尾氏なら接客以外なにを頼んでもソツなくこなしてくれるだろう。 そして、書いた企画書のタイトルは『小さなミートショップ』。これをこのままコーナー名にするつもりで本間さんに提出してみたところ、やっぱり本間さんだけあってちょっとしたツッコミが入った。 「ねぇ三浦さん、なんでミートショップなの? 多肉だから?」 「そうです。インパクトを狙いたくて」 「なるほどね。でもお客様に誤解与えないかな?」 「もしクレームが入ったら変更しますよ」 すると本間さんは「まぁ三浦さんのセンスに任せるよ」と言って笑ってくれた。今回ばかりはあまり口出ししない方針のようだ。 その後、私はネットで肉屋のレイアウトを調べまくり、与えられた3畳のスペースに肉屋っぽい雰囲気を作り上げていった。こんなことをしていると時々自分の職業を忘れてしまいそうになる。 するとそこへ、目を輝かせた神尾氏が「三浦さん……!」と若干ハイテンションに声をかけて来た。その手には変な形のテカテカした紙が握られている。 「あのこれ、作ってみたんです……。もし良かったら使ってください……!」 神尾氏が差し出した変な形の紙は『小さなミートショップ』の可愛いロゴだった。めちゃくちゃ上手い。まるでプロだ。俊敏で怪力な上に更にこんな才能まで持っているとは。 「すごい! ぜひ使わせてもらいます。ありがとう!」 こうしてプロジェクトの準備は着々と進められていった。
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