小さなミートショップ

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優衣と会う時間を作るためにどうにかカレンダーをこねくり回してみたものの、ゆっくり会う時間を作るのはやはり難しかった。仕事で忙しいのもあるし、基本的に希さんとの時間を優先して取るようにしているからだ。 そして結局、店での仕事を終えてからほんの2、3時間程度優衣の部屋で過ごすことになった。これではまるでそのためだけに会うような感じだ。でもまぁ仕方がない。 「希さん、この日ちょっと帰るの遅くなるよ。友達と会う約束したから」 「うん、分かった。忙しい時は息抜きしないとね」 最近はもう、優衣と会う約束をしたら素直に友達と会うと伝えるようになった。変に隠すから無駄な罪悪感に苛まれるのだ。考え過ぎて気付くのが遅くなってしまった。 しかしこれも希さんが一切干渉して来ないからできること。『どんな相手?』とか聞いてくる人だったら絶対バレないように隠し通すだろう。 「あ、希さん」 「ん?」 「これ。廃棄品で作ってみた」 そして、バッグの中に隠していた手のひらサイズの花束を希さんの前に差し出した。すると期待通り希さんの顔がパッと明るくなった。やっぱり愛する人の笑顔は嬉しいものだ。 「え、可愛いね。那央が作ったの?」 「うん」 「センスあるねぇ。色使いも好きだな」 「やった。希さんに褒められた」 この小さな花束は、私の店の多肉植物がつけた花の蕾を掻き集めたもの。植物本体の体力を奪わないために蕾の段階で花茎をちょん切るからこういう廃棄が出るのだ。 普段は掻き集めたりせずに全て捨ててしまう。しかし、私が蕾をちょん切っている場面を見た神尾氏が泣きそうな顔になり、そこで慌てて花束の制作を提案したという訳だ。なんという繊細男子。 「もらっていいの?」 「希さんが良ければ」 「嬉しい、ありがとう。枯れるのもったいないなぁ。ドライフラワーにしようかな?」 「ふふ。枯れたら捨てちゃって。また作ってくるよ」 やっぱり希さんとのこういう何気ないやり取りは心の底から幸せだ。この幸せだけは絶対に手放したくない。
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