小さなミートショップ

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その後もミートショップはなかなか順調だった。開店初期の頃はミートショップ周辺をウロついて逐一様子を伺っていたけど、落ち着いてきた最近は事務所に引っ込むことも多くなった。 やはりSNSの影響なのか若い女性が多く訪れる。そして私がその周辺をウロついている時はチラチラと視線を感じる。もうこれは私の宿命だ。あの母が無駄にイケメンだから私もこうなったのだ。 そしてある日の夜、仕事を終えてから優衣のアパートを訪ねた。前に電話した時の優衣の様子が頭にチラついた。 「ごめん那央さん。この前すごいワガママ言ったよね。あのあと反省した」 「いや、こっちこそごめん。電話もできなくて」 反省したという言葉通り、あの電話の時とは全く様子が違った。そして余計な言い訳はして来ない。優衣はあれをなかったことにしたいのだろう。 「仕事忙しいんだよね?」 「うん。たぶん昇進がかかってる」 「そっか。頑張ってるんだね。誰かのために」 「……うん」 優衣は黙ったまま私の首に腕を回してキスして来た。そのまま舌を絡め、私に胸を押し付け、そして私がその胸に触れる。 もうこの行為も常態化して同じパターンになってきている。最初の頃の強烈な快感ももう感じない。だけど優衣の方はそれに反比例して以前よりも激しく私を求めて来る。 優衣を絶頂に誘うのは容易かった。もう私の予感は間違いではないのだろう。 優衣も私と同じだ。相手を失いたくないからワガママを言わずに自分を抑えている。でも時に感情的になって相手を困らせてしまう。 だから多少のワガママを言われても優衣を嫌いにはなれなかった。自分を見ているようで少し苦しかった。 「年上なんだっけ。その人」 「うん。管理職の人だよ」 「だから追い付きたいんだ?」 「まぁね」 「健気だなぁ。那央さんはホントに」 優衣はその日、私が部屋を出るまで一言もワガママを言わなかった。次に会う話すら口に出さなかった。
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